2013年7月23日火曜日

「自然エネルギー」と「野菜」で子どもたちの未来を


こんにちは!夏休み目前、テスト期間まっただ中の菊池です。
今回は市民のための環境公開講座パート1、第2回のレポートをお届けします。

7月16日(火)第2回のテーマは
南相馬ソーラー・アグリパーク 「グリーンアカデミー」が開講
体験学習を通じた子どもたちの成長のために
でした。
 
 
南相馬ソーラー・アグリパークは福島県南相馬市にある、太陽光発電所とその電力を利用した植物工場、さらにこの2つの施設を活用した子どもたちの仕事体験の場「グリーンアカデミー」、これら3つの機能が一体となった施設です。
 
津波被災地を活用するだけではなく、地元の子どもたちの成長を支援する、福島復興の拠点としても位置付けられています。

講座では、南相馬ソーラー・アグリパークが誕生した経緯や、今後の福島復興においてどのような意味をもつ施設であるのか、話を伺いました。


なぜ事業を立ち上げるに至ったのか

今回の講師でいらっしゃる半谷先生は、東日本大震災以前の2010年6月まで、東京電力の執行役員をされていました。同時に福島県南相馬市のご出身でもあり、震災と深い繋がりをお持ちの方です。

2011年の震災当時、半谷先生は南相馬市における物資の支援活動に携わっていらっしゃいました。その活動の中で出会ったのが、支援場所を提供していた地元菓子店「栄泉堂」を営む女性。半谷先生は女性から、「子どもたちのために何かを」という一言を受け取ります。

震災から時間が経つに連れ「物」の支援は充実していきました。その流れの中で、半谷先生は「物」から「仕組み」の支援へと変えていく必要があると感じたそうです。
その際に「子どもたちのためになにかを」という一言を思い出し、「子どもたちの成長のために」なる仕組みづくりをしていこうという構想に至ったのです。

 
官民一体の復興事業として
 
南相馬ソーラー・アグリパークは企業一つで成り立っている事業ではありません。

まず、子どもたちが仕事体験をする場をつくるという構想にはキッザニアが関係しています。

キッザニアは世界中で展開されている、職業体験型のテーマパークです。半谷先生が震災以前より代表を務めている環境NPO「オフィス町内会」では事業の一つとして、このキッザニアに林業体験のパビリオンを出展していました。
このつながりが、グリーンアカデミーでの仕事体験を通し、子どもたちにモチベーションをもってもらうためのプログラム開発のきっかけとなりました。


そして太陽光発電所を建設するには大きな費用が必要です。

この問題は東芝からの出資や南相馬市からの復興交付金、農林水産省からの補助金によって解決されました。
また植物工場を構想に付加したことで、太陽光発電所にはかかせない広大な用地を南相馬市が市有地として確保。それだけではなく農地転用の諸手続きや植物工場メーカーの決定にも市が動きました。植物工場は南相馬市にとって、農業復興の要になりうるためです。

南相馬ソーラー・アグリパークは、こうした官民一体となった復興事業としてスタートしました。


南相馬ソーラー・アグリパークの現在と今後の展望

植物工場に関して、今では日々800株のレタスなどが出荷されています。太陽光発電所では170世帯分に相当する500kWの電力を発電し、植物工場へ送電しています。余剰分については固定買取制度による売電(40円/kW)も行っています。

 
そして今年5月、無事に開講された「グリーンアカデミー」。

現在すでに10の小中学校から200名以上が、正式な授業の一環としてグリーンアカデミーでの仕事を体験しました。
また小中学生に限らず、高校生には進路について深く考える場として、大学生や社会人には課題解決型の経営経験の場として、広く対象を設定し若い世代の支援をしていくということでした。


こうした循環型の人材育成を通し、南相馬市を初めとする被災地の中長期的な復興を目指すことが、南相馬ソーラー・アグリパークの大きな目的です。

そして今後は、この事業に確実な継続性をもたせることが課題となります。

○太陽光発電だけではなく風力発電をはじめとする自然エネルギーを利用した発電を拡充し、南相馬市を「スマートタウン」に近づけること。
○現在は無料で行っているグリーンアカデミーでの仕事体験の一部を有料化し、継続的な運営をすることで人材育成を広め続けること。

こうした問題を解決し、南相馬ソーラー・アグリパークをさらに発展させていくことで、被災地復興へ貢献していきたいと半谷先生はおっしゃいます。


講演を通して

(1)利益を求めないビジネス
半谷先生は講演冒頭で、南相馬ソーラー・アグリパークは「利益を求めるものではないという側面での環境ビジネス」だと紹介されていました。

実際に南相馬ソーラー・アグリパークの事業計画では、20年間をかけても1億2千万の利益にしかなりません。資本が約3億円であったことやメンテナンス費のことを考慮すると、利益はないに等しいともいえます。
もしもこれが一般の事業であったなら、破たんどころか立ち上げにも至らないでしょう。

しかしそれこそが、このビジネスが多くの方からの賛同を受け、国や市、企業、市民が共同してつくりあげる復興ビジネスへとなりえた理由なのではないかとも考えます。

あくまでも子どもたちの体験学習の場所を継続させることが目的だと半谷先生は強調していらっしゃいました。利益ではないビジネスに多くの人が賛同したということは、それだけの人々が子どもたちの成長や福島の復興を願っているという証拠なのではないでしょうか。


(2)本格的な仕事体験
またグリーンアカデミーでの仕事体験プログラムが非常に充実しており、大変驚きました。

施設を見学するだけ、模型を使って体験するだけ、というわけではありません。
自分の担当を決めて実際に稼働している太陽光パネルを巡視点検し、ワークシートに記入します。個人チェックだけではなく、グループチェックもする二重の点検です。

本物の太陽光パネルを動かすこともでき、子どもたちは発電に最適な角度、方向があることを知ります。

小学生がここまで体験ができるんだ!と思わず驚いてしましました。なんなら私も参加したい…。

子どもたちが仕事体験をするとき、職業の概要を学ぶことはできてもその責任を学ぶことはなかなか難しいのではないかと思います。体験するためだけに準備された体験用の仕事、一般の仕事体験だとこれが当たり前であるように感じます。

しかしグリーンアカデミーでは自分の担当を決め、さらに本物を使ってどうしたらうまくできるのか考えながら仕事を体験をすることができる。仕事には責任があるということを学ぶ本格体験型のプログラムであると感じました。


まだスタートしたばかりの南相馬ソーラー・アグリパークグリーンアカデミー
福島県の長期的な復興に結びつく、豊かな人材育成の場としてこれからますます注目されそうですね。
さらにはこの事業をケーススタディとした様々な復興事業が出てくるのではないでしょうか。

自然エネルギー」「野菜」「子ども
一見するとバラバラにみえる3つの言葉が「復興」を軸につながっている、素敵な事業だなと感じました。大人向けのプログラムも用意されているようなので、今後も注目していきたいと思います。


担当:菊地

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