2013年12月15日日曜日

心が幸せになる山歩きを


「今日は雨だからつまらない、と思うとつまらない。
雨だけど、雨しか見られないものを見ようと思うと自然はいろいろなものをみせてくれる。」

みなさまこんにちは!鍋とこたつの恋しい菊池です。

「市民のための環境公開講座 2013」は全講座、無事に終了いたしました!
受講されたみなさま、レポートを読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。


今回は最後の講座となりました
トレッキングの楽しみ
のレポートをお届けします。

講師はネイチュアリングスクール「木風舎の代表を務める橋谷晃先生
「木風舎」では登山トレッキングネイチャースキー自然感察プログラムなど、年間100回ほどのツアーを行っています。橋谷先生はこの木風舎のチーフガイドとしてはもちろん、数々の講演やテレビ、雑誌などを通して、自然と触れ合う楽しさを伝えるためにご活躍されている方です。
NHK教育テレビ『チャレンジ!ホビー・あなたもこれから山ガール』の講師や、テレビ朝日『大人の山歩き』のガイドとしてご存知の方も多いのではないでしょうか?



今回は山を歩くということ、そのシンプルさの中に詰まった魅力をたっぷりとお話しいただきました。


”記録の登山”から”幸せの山歩き”へ

20代のころ、橋谷さんにとって登山とは、記録の世界でした。難易度の高い山を、できるだけ早く登ることに意味を感じていたそうです。

しかし、日に何度も「早くしろ!」とパートナーに叫びながら山を登っている、これに気が付いたとき、この登山は本当にやりたいことなのだろうか?という疑問が生じたそうです。
人に記録を認めてもらうことよりも、足元に落ちている木の葉を見て自分が幸せだと感じることの方が大事なのではないかと感じ始めたのです。

ちょうどその頃、子どもが生まれ、ふもとのキャンプ場や高原に滞在するようになりました。近くの森をゆっくりと歩いていく。するとこれまでに見えていなかったものが見えてきた、それはまるで宝箱のようであった、というのです。

そのとき橋谷先生には何が見えていたのでしょう?(…ブログ後半で説明しますね。)

登山をしていたときに感じた疑問、そして森をゆっくりと歩いたときの気持ち、それらを通して橋谷先生は心が幸せになることを大事にしたいと考えるようになり、登山のスタイルを大きく変えたのだそうです。


トレッキング今昔

これまでにも何度か、トレッキング(登山)がブームになったことがあります。その歴史を振り返ってみましょう。

 
まずは戦後の第一次登山ブーム、マナスルブームとも言われています。「三人寄れば山岳会」とも言われるほど、登山が大ブームとなりました。高いレベルの山を目指すことが目標だった時代です。

次にやってきたのは中高年の登山ブーム百名山ブーム。この頃から、ピークを目指すことよりも、山を歩くことに重きがおかれるようになりました。ただこの時には40代の中高年層がブームの中心にあり、若い人にとって登山はちょっと時代遅れのもの、というイメージが強かったようです。

そして現在、第三の波が来ています。それが山ガールブームです。
ただし、名前のように若い女性だけがブームの中心にいるというわけではなさそうです。山を楽しむ人たちが男女問わず、全年齢層にわたって増えた結果が山ガールブームを巻き起こしました(若い女性の増加が特に意外性をもっていたので山”ガール”になったんですね)。


そんな山ガールブーム、これまでの登山から少し変化したことがあります。
それは登山の対象に、「山」であることよりも「自然」を求めるようになったこと。高くて険しい山をクリアしていくことが目標であったこれまでの登山から、自然の中を歩くことや自然を歩いて楽しむトレッキングが一般的になりつつあります。

「○○山を登りました」から、「山を歩いてこんなことを感じました」へと、登山の目的が変わりつつあるようです。山を歩くことに、心の豊かさを求める人が増えてきたからでしょう。それが「トレッキング」という言葉がメジャーになった理由なのかもしれません。


山歩きってこんなだよ、伝えたい魅力

とびっきりの笑顔で山歩きの魅力を語る橋谷先生。では、橋谷先生が伝えたい”山歩きの魅力”とはなんなのでしょう。

(1)名前だけじゃなくてもいい山はたくさん
富士山や高尾山、登った経験のある方も多いのではないでしょうか。有名で近場、そして登山入門としてもメジャーな山ですよね。
しかし魅力的な山ではあるものの、どちらも山に行ったからこその魅力が伝わりにくい山なのだそう。その理由は人の多さ!

山に行ったからこその”静けさ”や”ゆったり感”、これを味わうには名前にとらわれない山選びが必要です。山ならではの魅力を堪能しなければもったいない!
名の知れた山だけに魅力が多いわけではありません。山を楽しもうという気持ちさえあれば、山は向こうからいろいろなものをくれるのだ、という言葉が印象的でした。

(2)自分の心にとって楽しい山歩き
山はある種の”旅”、だといいます。そこにいる時間を、ゆっくりとじっくりと楽しむことが大切です。
そこには今日じゃないと見られないものがあります。雨だからといってがっかりするのはもったいない!その日、その場所だからこそなのです。そこにあるメッセージを受け止める山歩きをしてみませんか?

しかし、そうはいっても危険な天候のときに無理は禁物。荒れた天気では山歩きも辛いものになってしましますし、事故が起きるかもしれません。自分の心が楽しくなるコンディションで山歩きをすることが、実は安全につながるんですね。

(3)命の輝き、美しさ
「険しい山が神々の世界がならば、森は命の美しさ。」
記録の世界として登山を捉えていた20代を振り返った橋谷先生がおっしゃった言葉です。

ゆっくりと歩くことができる山や森の魅力、その一つは自然の豊かさにあります。見えている景色いっぱいが、たくさんの命によってつくられています。
橋谷先生にとって、それは宝物に見えました。自分の子どもと一緒にゆっくりと森を歩き、周りに溢れる命の多さ、その輝きに橋谷先生は圧倒され、これを伝えていきたいと感じ、現在の活動につながったのだそうです。

じっくりと、命の輝きをたくさん感じる山歩き。自然の中にいるとみんな素敵な笑顔になるんだよ、とおっしゃる橋谷先生の言葉に、とても納得しました。


講座を受講して…

パート3「自然のチカラ」の3講座を終え、感じたことがあります。

自然を守ろう、自然を大切にしよう、という言葉は抵抗なくあちこちで使いまわされています。

しかし、どうして守らなければいけないのでしょう。なぜ大切にする必要があるのでしょう。
こう疑問を投げかけた時、地球温暖化を防止のためであるとか、生物多様性を維持するためであるとか、なにか理論立てて説明のできる理由をあげるのが一般的かと思います。

けれど、そういった数値にのっとった理由をあげる前に、私たちが自然から得ている心の豊かさや、自然から感じとる私たちの感情そのものを見つめなおすべきなのではないかと思うようになりました。

自然を楽しみ、豊かさや恵みを感じること、そのとき感じた気持ちが、自然を大切にしようという思いの根本になるのではないか。また、身近な自然の魅力を再発見し、自分の心情の一部にしていくことで、自然に対して主体的なまなざしを持てるのではないか。


今回のパート3では、そういった自然の魅力を存分に知っている方々が講師を務めてくださいました。
私自身、自然大好きっこですので、そういった自然に触れ合ったときの喜びや楽しさを知っているつもりでいましたが、まだまだ甘かった!
1講座目が終われば森林浴に行きたくてうずうずし、2講座目が終わればトレイルグッズを買いに行こうとし、3講座目が終わればトレッキングを始めたくなり…。
(来年はトレッキングが趣味な友人にくっついて、山歩き、はじめようと思います。)

何度いってもいつまでいても吸収しきれないところが自然の魅力であり、自然のチカラなのかな、と思います。私たちがもらっている自然のチカラ、その大きさは計り知れませんね。


担当:菊池

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