みなさん、こんにちは!
長いながい夏休みも遂に終盤となってしまいました、菊池です。
9月10日(火)より、「市民のための環境公開講座」 パート2が始まりました!
今回はその第1回目のレポートをお届けします。
テーマは
「食育のすすめ -大切なものを失った日本人-」
講師はテレビや数々の書籍でおなじみの服部幸應先生です。
学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長であり、料理評論家としてもご活躍されています。また今回の講演内容とも深いつながりをもつ、「食育基本法」の制定にもご尽力された方です。
「食育」という言葉、見たこと・聞いたことはあるでしょうか?
知ってはいるけれど、説明するとなると…という方も多いかと思います。
服部先生はこの「食育」に、3つの柱を掲げていらっしゃいます。
では、講座内容をこの三本柱にもとづいて振り返ってみましょう♪
(1)選食能力
安心、安全、健康な食を選ぶ能力を身に付ける
健康な食、この例として日本人の塩分摂取量の話がありました。
日本人の塩分摂取量は世界193国中、何位くらいだと思いますか?実は現在3位、過去には1位になったことも。
日本食はヘルシーというイメージが強いですが、味噌や醤油、漬物など塩分の多い保存食がたくさん。これに加えて外食や加工食品にも塩分が多く含まれています。
このような塩分過剰な食生活は、内臓疾患につながり、さらには癌発病のリスクを高めるとも言われています。
また、おふくろの味が減ってしまったことで、子どもに選食能力(安心、安全、健康な食を選ぶ力)が身につかなくなってしまうといいます。
共働き家庭の増加や核家族化によって、子どもたちが外食・調理済み加工食品を口にする機会が増えてきました。こういった食品の多くには、いくつもの食品添加物が使用されています。
食品添加物の多い食事は味覚の衰えにつながる、といいます。味を感じるセンサーを「味らい」といいますが、食品添加物は「味らい」のはたらきに重要な亜鉛の吸収を妨げたり、排せつを促してしまうのだそうです。
味覚の発達は小学校4年生前後で大人と同等のレベルに達します。この時期までに食品添加物の多い食生活を送ると、味のセンサー「味らい」に影響が出て、味覚の発達が不十分になるのではないかと考えられているのです。
このような問題に対して、フランスでは学校の授業の一環として、「味覚教育」が行われています。日本の一部でも、3年前から味覚教育が始まりました。
多様な食文化・食品が溢れている時代です。安心、安全、そして健康な食を選ぶため、子どもの頃から知識や正しい味覚を身につける必要があるのでしょう。
(2)躾
幼児期から食卓を通して一般常識を身に付けさせる
ほんの数十年前まで、日本の一般家庭ではちゃぶ台を囲み、おじいちゃんおばあちゃんも一緒の家族全員で食事をとる。
これが当たり前の光景でした。
現在、このような形式で食事をとる家族はどのくらいいるのでしょう。家族がバラバラに食事をとることに対して、服部先生は警鐘を鳴らされます。
かつて食卓は子どもたちへの躾の場でした。
子どもたちには両親からだけではなく、祖父母からも眼差しが向けられていました。マナーや礼儀を教えてくれる環境が、日々の食卓にあったのです。
しかし核家族化の進行、外食の増加、便利な調理済み加工食品の普及によって、このような環境がなくなっていきました。
家族がバラバラに食べる食事、手作りではなく電子レンジで温めた食事…。正しい箸の持ち方が出来る子どもが減ってしまったのも、子どもに躾を行う家庭環境が十分に確保できていないからだといいます。
このような状況がもたらす影響は「食」だけの問題に留まりません。正しいマナーや礼儀が身に付いているかどうか、それは子どもの成長やその後の生活に必然的に関わるもの。
躾が出来る環境を、子どもがなるべく小さい頃から、つくってあげなければいけない。その一つが、家族で囲む食卓なのでしょう。
(3)食糧問題
日本の食料自給率を知った上で食を見直す力をつける
食糧問題はいわば環境問題であり、食を地球規模のグローバルな視点でとらえる必要があると服部先生はおっしゃります。
日本はいま、食の輸入大国です。
世界193カ国のうち、なんと70カ国から食品を輸入しているそうです。
食料自給率は39%(カロリーベース,H24農林水産省)まで低下し、今後さらなる低下も懸念されています。
また中国をはじめとして、急激な経済成長と人口増加のみられる国が増えてきています。
そのため食料品に対する国内需要・輸入需要が高まり、価格の高騰や買い負けが起こりはじめています。日本が優先して、安価に、食品を輸入できる時代ではなくなって来ているのです。
また国外だけではなく、国内の食糧問題も見逃せません。農業就業人口は減少の一途をたどっています。1400万人を越えていた人口も、50年間で260万人となってしまいました。
更に農業就業者の平均年齢も66.2歳(H24)と、高齢化が進んでいます。近年、多様な政策・取り組みによって若手の新規農業従事者も増えつつありますが、その増加ペースは減少ペースに比べると圧倒的に緩やかなもの。減少は止まりそうにありません。
地産地消を広めていくことや、若手の農業従事者が増えるような、農業に誇りを持てるような仕組みをつくっていくことで、食糧問題にも取り組んでいきたいと服部先生はおっしゃっていました。
講座をうけて…
「食育」、これまでもっと狭い意味でとらえていました。
外食ばかりはよくない、食品添加物には注意しなければいけない、食べ物を粗末にしない、そういう個人の意識改革を目的としているとばかり思っていました。
しかし実際はもっと広い捉え方での「食育」の普及が求められていました。
個人の健康問題だけではなく、幅広い社会問題に「食育」は関わっています。特に服部先生は「子ども」に対する教育に関して熱心に取り組まれているように感じました。子どもたちが正しい食への広い知識をもち、考えられるようになることを重要視されていたように思います。
それは服部先生ご自身が料理に関する仕事に就かれているから、というだけではなく、「食」が生きていく上で欠かせないものであるということをもっと認識してほしい、そのような思いを感じました。
また農業就業人口の急激な減少、輸入に依存した食品産業の危うさを再認識しました。
食料自給率の問題に関しては、賛否両論、様々な議論がなされています。しかし、現状が維持できる・できないに関わらず、地元で食を支えていく必要性があるのではないでしょうか。身近に食を支えてくれている人がいるという基盤をつくることは、食を大切にする基礎であるように思います。
「食育」ってなんだろう。
それは一言では表せないくらい、いろいろな問題を含んでいました。しかし私の中で、一つの理解として「目の前にある食品がどこから来たのか・どのようにして作られたのかを認識し、自分で考えて選ぶこと。そしてその食品に感謝すること」と解釈しました。
毎日お世話になるご飯。ちょっと違った見方を教えてくれる講座でした。
担当:菊池


0 件のコメント :
コメントを投稿